最高裁判所第三小法廷 昭和34年(オ)882号 判決 1960年11月01日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人山本正男の上告理由第一点について。
論旨は原判決には土地区画整理法九九条の解釈を誤つた違法があると主張する。しかし、特別都市計画法一四条三項(同法廃止後は土地区画整理法九九条二項)の趣旨は、原判示にいわゆる換地予定地権利者が従前の宅地と換地予定地との二重の使用を禁止するだけにとどまるものではなく、換地予定地上に従前の正当な権利者が建物などを所有する場合にこれを保護するために右正当な権利者が建物などを撤去または移転するまで換地予定地権利者の換地予定地の使用を禁じた関係上、換地予定地権利者の従前の宅地の使用を許容したものと解するを相当とすることは、原判示のとおりである。されば不法占拠者に対しては右の規定に拘りなく換地予定地権利者は換地予定地の使用収益をなしうる旨の原判決における判断は正当である。所論は右に反する独自の見解に立脚して原判決を非難するもので採用できない。所論法令違反の主張は理由がない。
同第二点について。
論旨は原判決には行政処分の解釈を誤つた違法があると主張する。しかし、仮換地の指定がなされた宅地についての使用収益権は特別都市計画法一四条(同法廃止後は土地区画整理法九九条)の定めるところによるものであるが、右法条によれば従前の宅地について権原に基ずいて使用収益することができる者は仮換地について従前の宅地に対する使用収益権と同じ内容の使用収益をすることができるのであるから、従前の権利が所有権に基ずくものであれば仮換地に対する使用収益権もこれに準ずるかもしくはこれと同視すべきものでなければならない。従つて、原判決において、従前の宅地の所有者である訴外鈴木善七が本件換地予定地について所有権の内容である使用収益権限と同じ使用収益権限を取得した旨判断し、それ故に、同訴外人の右権利を同人の債権者である被上告人において債権に基ずいて代位行使できるものとして、被上告人の本訴請求を許容したのは正当である。論旨は理由がない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 高橋 潔 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 石坂修一)
《当事者》
上告人 静野豊吉
右訴訟代理人弁護士 山本正男
被上告人 平井 博
右訴訟代理人弁護士 花村美樹 瀬戸 誠